話数 最終話(第131話)
放送日 1977年(昭和52年)3月29日
タイトル 「さらば刀舟 江戸の街」
メインキャスト 叶刀舟:萬屋錦之介、仏の半兵衛:桂小金治、榊大介:真夏竜、
矢車のお千:上原美佐、稲妻のお蘭:江波杏子
ゲストキャスト
横井蔵人
(藤巻潤)
岩月左門
(小松方正)
美濃部
(中村竜三郎)
水野忠篤
(水島道太郎)
沼田玄伯:小堀阿吉雄、瀬川矢五郎:勝部演之
名主・仁佐衛門:日野道夫、
その他:福本潤、花原照子、山根久幸、田原千之右、折尾哲郎、
オ−プニング
ナレ−ション
天保八年二月、大塩平八郎の乱の直後。十一代将軍家齊はその職を家慶に譲り
大御所となった。しかし、依然として政治の実験を握り続けたのである。
そのことは権力奪取、改革の機会を狙う老中水野忠邦派と大御所系水野忠篤派との
激しい確執を呼び、その争いはこれから三年余も続くのである
あらすじ 大御所、徳川家斉が馬から落馬し瀕死の重傷を負った。
そして主を落とした馬は暴走し百姓の子供を跳ねてしまう。
事故を聞きつけた大介はすぐに治療のため現場に駆けつけるが代官所の役人が
刀舟達の村への出入りを妨害するのであった。
一方大御所を看る御天医は肋骨が心臓にくい込み蘭法を極めた外科医でないと
救うことは出来ないと言う。
横井蔵人は噂に聞いた刀舟に助けを頼んだ。だが刀舟はどんな偉い人か
知らないが子供を救おうとした刀舟に代官所を使い妨害しようとした事に対して
「命に軽い重いはねぇんだよ。」と治療を断った。
そこに大御所の異変に気がついた水野忠邦一派が動き始めた。
みどころ
江戸を去る決意をした刀舟が瑞光院の中を見渡すと、そこには生き生きとした仲間の
姿が映し出された。大介、お蘭、半兵衛、お千。そして今は亡き弥九郎、お竜の姿も・・・。
この直後、張り紙を残し刀舟は姿を消した・・・・。

武家の棟梁たる将軍であった者が落馬で重態。
幕府終焉を暗示する事件で最終回は始まります。
大御所の治療を拒む刀舟を説得する横井蔵人。
その赤心を推して人の腹中に置くの如くな姿に、
刀舟は真の武士を見て応じたのでしょう。
その蔵人を死なせる公儀に最早、士道は亡く。
ラストの刀舟を照らす斜陽は、幕府の残照を思わせます。
その後、明治維新を刀舟は何処で迎えたでしょうか?
それでも庶民が泣き続ける限り、
あの胸のすく啖呵が止むことはないに違いありません。
官尊民卑が続く今の時代にあっても・・・。
市井のヒーローよ、永久に!
                               夢幻猫さん談

初めて刀舟先生と出会ったのは小坊の頃でした。
(ちなみに、本放送です。)地獄の王将の次の日、クラスの
話題となったのが最終回の予想でした。(何故か、時代劇
ファンが結構いました。今から思うと時代劇を語り合う
小学生て、オイオイと思いますが。)

「やったぜ先生、最終回は江戸城に殴りこむんやろ?」
「いやぁ、江戸城はきついやろ。野戦(オープンセットの
事です。)でケリつけるんとちゃうか?」
好き勝手に言ってました。残念ながら、最終回は小学生が
理解するには、ちょいと深すぎまして不評でしたが。
                               ZEROさん談

ついに131話、放送日数二年半続いた「破れ傘刀舟悪人狩り」の最終回です。
最後に刀舟先生は国家最高権力に対してに見事に啖呵をきります。
誰に対しても姿勢を崩さない刀舟先生は誠に見事です。
そして江戸を離れて行った刀舟先生はどこに行ったのでしょうか?
もしかしたら、あなたの街に住んでいたのかも知れませんね。
                               とうしゅう@管理人
啖呵
水野忠篤 「これより、お城に戻るところじゃ、お気づきになられた大御所様がそのほうの
働きに対し直々お言葉を下さるとのことじゃ。ありがたく給われよ。」
叶刀舟 「いらねぇよ。」
水野忠篤 「何、なんと申した。」
叶刀舟 「いらねぇと言ってんだよ。」
美濃部 「待て、こやつ、天下の大御所様に対してなんたる雑言。」
水野忠篤 「気が狂うたのか、叶刀舟。」
叶刀舟 「やかましいや、てめぇら勝手に押し掛けて来やがって、
ありがたくお言葉を給われだとぉ、笑わせるんじゃねえや、この野郎。」(カ−ン)
「てめぇら、権勢欲にうつつを抜かすてめぇらにとっちゃその駕籠の中にいる 
大御所って人だけが大切だろうが、俺にとっちゃ病人は・・。」(カ−ン)
「大御所だろうと町人だろうと医者の取る脈に変わりはねぇんだい。」(ペンペン)
「てめぇらのくだらねぇ権勢争いの為に関わりのねぇ、百姓町人までが
とばっちりを受けるんだ。」
「おいっ。」(ペンペン)
「天・下・万・民・あって・こ・その大御所だ・・。」
「将軍だって事も忘れやがって。」(カ−ン)
「とっととけぇんな。」
水野忠篤 「無礼者、斬れっ、斬り捨てぃ。」(キィ−キィ−)
横井蔵人 「待たれぃ。」
「大御所様がっ。」
大御所 「よい、捨て置け。城へ戻る。」
水野忠篤 「はっ、承知致しました。」
「戻れ。」
一同 「はっ。」

大御所の行列が去った後・・・・。
蔵人 「叶殿、代官所へは上意の使者が参り今頃は治助もお千も放免された
はずでござる。」
叶刀舟 「おめぇさん、それを言う為にわざわざ残ったのかい。俺を斬るためだろう。」
蔵人 「それがし、自らかってでもうした。お相手下さるか。」
叶刀舟 「おめぇさんには殺気がねぇな。斬られる気だな。」
蔵人 「やはり、見破られましたな。やむをえませんな。」
くるっ・・バシュ(腹を切る蔵人)
叶刀舟 「おおっ、馬鹿野郎。」
蔵人 「お手当無用。それがし、覚悟の上で・・叶殿、黙って、それがしの頼みお聞き
下さい。すぐさま江戸をお捨て下さい。」
叶刀舟 「なんだと・・・。」
蔵人 「お頼み申す。それがしが果てても次々と刺客が・・・、参るは必定。
必ず類は周りの者全てに及び・・・しっしかも容赦なく、あらゆるてっ手だてを使うはず。
いかな貴公とて・・やがては・・・ぐふっ・・。死を以て貴公にお頼みする・・。ぐはっ。 
つかの間のお付き合いではござったが・・・。きっ貴公・・・。バタッ・・・ 
別れの時
瑞光院の門に張り紙が・・・。


「旅に出る。」の文字

半兵衛 「あんまりだよ・・・・。旅に出るったって、
いったいどこ行ったんだ。」
「俺っちがけぇってくるまで待っててくれたって
バチあたらねぇじゃねぇかよぉ。」
「これっきり先生に会えなくなるんじゃねぇのかい。」
「水臭いよぉ!」

お蘭 「だから、早く戻ろうと言ったじゃないか。」
「それを役人の目がうるさいからって。」
「あたしの家なんかでボヤボヤしてたからいけないんだよ。」

お千 「先生、すぐ帰ってくるよ。」
「心配いらないって。一時(いっとき)のことだよ。」

お蘭 「当たり前だよ。先生はね、あたしたちを見捨てるわけが
ないんだ。」

半兵衛 「ううう・・。」
(沈黙)
大介 「先生ぇ〜。」(立ち上がる大介)
大介の声が夕空にこだまする・・・。声が届いたか、振り返る叶刀舟。
お新 「先生ぇ、一杯やろうよぉ。」
「何だよ、みんな、どうしちまったんだよ。」
「え?ははは、なん?」
「なにぃ、なんだよ。こりゃ、ははん。」
「・・・・た・び・・に・・でる。」
「なんだよ・・。先生いないのかい?」
「よぉ、先生いないのかい?」
「そんなのないよぉ。そんなの・・、そんなのないよぉ先生ぇ。」


「あああ、あは・・あは・・うううう。」
(泣き崩れるお新)
大介 「・・・・。」 お千 「先生ぇぇえ。」
半兵衛 「・・・・・。」 お蘭 「せんせ・・。」
エンディング
ナレ−ション
刀舟は行く。どこに行くのか誰も知らない。(ピ−ヒョロロロロ
だが、どこかできっと噂が立ち、あの胸のすく啖呵が風に乗って聞こえてきたら・・。
そこにきっと刀舟がいる。
叶刀舟、生国年齢ともに不詳。蘭方を極め、無外流抜刀術の達人。
庶民をこよなく愛し、その性格、豪放にして磊落、別名あり・・。
人呼んで、破れ傘刀舟・・・・・・・。(キン

(参考)
豪放:心が大きく小事にこだわらないこと。
磊落:おおまかで細かいことにこだわらないこと。心が大きくてさっぱりしていること。
企画 勝田康三
原案協力 土井道芳
プロデュ−サ− 吉津正、菜穂進
脚本 浅間虹児
音楽 木下忠司
撮影 坪井春樹
美術 阿部衛
録音 宮永晋
照明 嶋田宣代士
編集 阿良木佳弘
助監督 下村優
記録 黒岩美穂子
制作担当 原田昇
殺陣 尾型慎之介
演技事務 石坂久美男
効果 東宝効果集団
整音 トリッセン・スタジオ
現像 東洋現像所
装置 三船プロ
小道具 高津映画装飾
装飾 三度屋美術工房
衣装 京都衣装
美粧 山田かつら店
監督 村山三男



inserted by FC2 system